【日本酒事始め】日本酒を香りで味わう!通になるための基礎知識を紹介!

前回の記事「日本酒の味わいは8つの要素で決まる!通になるための知識を解説!」では、日本酒の『味わい』について解説しました。
今回の記事では、『味わい』と並んで、日本酒の味を決定するもう一つの重要な要因『香り』の基礎知識について紹介していきたいと思います。

日本酒といえば、”甘口”や”辛口”といった味わいに注目しがちですが、実は香りも重要な要素のひとつです。
「日本酒の味は『4つのタイプ』に分けられる!」の記事でも触れましたが、人間は食べ物や飲み物の『味』を、「香り」と「味わい」の両方を知覚することで感じ取っています。

これは、某有名グルメ漫画(『美味しんぼ』です)に描かれていたことですが、試しに、鼻をつまんで食べ飲みしてみると、味をあまり感じなくなってしまいます。
それほど、香りというのは『味』にとって大切な要素なのです。

今回は、そんな、日本酒の『味』を語るうえで欠かすことのできない『香り』について説明していきます。

 

Contents

香りの基礎知識「上立香」と「含み香」

食べ物・飲み物の「香り」は、大きく分けると、「上立香」と「含み香」に分けられます。

上立香(トップノート、トップノーズ)

「上立香」は、『うわだちか』または『うわだちこう』と読み、 「『飲む前』に感じられる香りのこと」をいいます。

「上立香」というと、一見難しそうに感じますが、飲む前にふわっと鼻に入る香りのことです。
普通、「香り」といった場合には、この「上立香」のことを指しています。
今回の記事でご紹介する「香り」も、この「上立香」のことになります。

含み香(アフターフレーバー)

「含み香」は『ふくみか』『ふくみが』または『ふくみこう』と読み、 「『飲んだ後』に感じられる、または、味とともに感じられる香りのこと」をいいます。

口に「含」んだ後に感じる香りだから「含み香」というわけです。

含み香と上立香のギャップが少ないほど香りと味わいのバランスが取れた日本酒である、といわれることがあります。

 

日本酒の香りは「吟醸香」「原料香」「熟成香」「乳酸香」に分かれる

香りは、無数の形で表現されますが、大きくは4つに分けられます。
それぞれの香りにみられる香味特性や特徴をまとめてみました。

【日本酒の4つの香り】

種類 香味特性 特徴
吟醸香 薫酒 主に酵母に由来する香
原料香 醇酒 主に原料に由来する香り
熟成香 熟酒 主に時間経過に由来する香り
乳酸香 主に乳酸に由来する香り

それでは、より詳しい内容をみていきましょう。

 

吟醸香:果実や花に例えられる香り

吟醸香は、その名の通り「吟醸」と付いた日本酒で感じられる香りで、香りのイメージとしては、果実や花に例えられ、「フルーティーで華やかな香り」などと表現されます。
日本酒の4つの味のタイプの中では、主に薫酒に多く現れる香りです。

ここからさらに解説しますが、少し専門的な話になりますので、そういうのが苦手な方は読み飛ばして、次の「原料香」に進んでください。

【吟醸香の主成分】

吟醸香は、主に酵母がアルコール発酵している間に生成される香りで、主な成分は「カプロン酸エチル」「酢酸イソアミル」などです。

カプロン酸エチル

カプロン酸エチルは、みずみずしい甘味と酸味が特徴的なリンゴや洋梨などの果実に例えられる成分で、吟醸香の中でも主要な成分です。
近年、カプロン酸エチルを多く生成する酵母が多く登場しており、その中でも「協会1801号」や「M310酵母」が代表的です。

現在は、日本酒を飲む人のすそ野が広がって、こうした香りの日本酒が若い人や女性、海外の人から支持を集めるようになっています。
こうした流れから、「独立行政法人 酒類総合研究所」が毎年行っている全国新酒鑑評会では、カプロン酸エチルを含む出品酒が高い評価を得る傾向にあります。

酢酸イソアミル

酢酸イソアミルは、濃厚な甘味を持ったバナナやメロンなどの果実に例えられる成分です。
代表的な酵母として、「協会9号」や「協会14号」が挙げられます。

フーゼル油(高級アルコール)

一般に「アルコール」と呼ばれている「エチル・アルコール」よりも分子量が多く、沸点が高い脂状の物質のことで、「高級アルコール」とも呼ばれています。
酢酸エステル、ヘキサン酸エチルなど、さまざまな香りの成分を含んでいます。
低精白米の使用や発酵温度が低い際に生成されやすく、ホワイトボード用マーカー類などの香りに例えられます。

【好ましくない日本酒の香り】

  • 酢酸エチル:セメダインや接着剤に例えられる香り。
  • ジアセチル:発酵バターやヨーグルトに例えられる香り。日本酒の場合は、不快な甘さを思わせる香りとして捉えられる。

上記の2つの成分は、好ましくない香りといわれています。
吟醸香といっても、すべて同じ香りではなく、成分によって大きくイメージが異なります。

 

原料香:米や米麹に例えられる香り

原料香は、日本酒の原料である米や米麹に由来する香りで、日本酒の核となるものです。

香りのイメージとしては、米や米麹・穀物類、飴やマシュマロなどに例えられ、「ふくよかな香り」などと表現されます。
日本酒の4つの味のタイプの中では、主に醇酒に現れることが多く、「純米酒」と付いた日本酒で感じられる香りです。

 

熟成香:時間経過で感じられる香り

熟成香は、時間の経過により日本酒の中の成分がゆっくりと変化していくことにより現れる香りのことです。

香りのイメージとしては、カラメルや黒蜜類、ナッツ、ドライフルーツ、またはスパイスに例えられ、「奥行きのある重厚な香り」などと表現されます。
日本酒の4つの味のタイプの中では、主に熟酒に多い香りです。

熟成香の主成分は、褐変反応(メイラード反応ともいう)により、アミノ酸が分解されることで生成される「ソトロン」という成分です。

【「老香」について】

なお、同じく時間経過によって感じられる香りには「老香(ひねか)」というものもあります。

「老香」とは、日本酒が熱の影響を受けると発生する劣化臭のことで、古米や傷んだ穀物に例えられる香りなのですが、人や場合によっては、熟成香と同じようにカラメルやスパイスの香りに例えられる香りに感じられます。

知らない人、慣れていない人や、お酒を冷やして香りが立ちにくくなっている状態だと、香りだけでは「熟成香」と「老香」を判別することは難しいものがあります。

お酒が熱の影響で劣化すると、色が濃い黄色になったり、熟成香と同じような香りであっても、不快な感じを受けたりしますので、「老香」かどうかは、そうした外観も考慮して総合的に判断します。

 

乳酸香:乳製品に例えられる香り

乳酸香は、ほとんどの日本酒で、製造される際に使用される「乳酸菌」や「乳酸」に由来する香りです。
イメージとしては、生クリームやヨーグルトなど乳製品に例えられる香りです。

他の3つの香りと違い、乳酸香は、4つの日本酒のタイプのどれかに現れやすい、ということはありません。
ただ、乳酸菌を育成して造られる「生酛造」「山廃造」系のお酒では、比較的この乳酸香を感じられることが多いように感じられます。

 

日本酒の香りに関する基礎知識を身につけて通になろう!

今回は、日本酒の香りに関する基礎知識について解説してきました。

日本酒を飲んだ時、多くの方はお酒の香りを感じていると思います。
しかし、こうした香りを表現するのは難しいものです。

そんな時、日本酒の香りに関する基礎知識、特に、香りの例え方(花、果実、穀物、黒糖蜜、ナッツ、ドライフルーツ、スパイスなどの分類と、バラ、洋ナシ、米、カラメル、アーモンド、干しブドウ、シナモンなどの具体的なもの)を知っておくと、香りを表現しやすくなります。

日本酒の香りは、味と並んで重要な要素のひとつです。

その香りの知識を身につけておけば、日本酒の味わい方も変わると思います。
また、通と呼ばれる人たちは、こうした香りに関する基礎的な知識をもっており、その上に、より深い知識や様々な経験を持っているから、お酒の味や香りをより一層楽しめたり、それらについて的確な表現で人に伝えることができるのだと思います。

本記事の日本酒の香りに関する基礎知識を身に付けて、みなさんも通な気分を味わってみてください。

 

次回は、第6回「日本酒の味は温度で変わる!お酒を美味しく呑むための冷やし方・温め方を紹介!」です。

 

【参考文献】
日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI) 著『新訂 日本酒の基』 NPO法人FBO 2018年

 

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