【日本酒事始め】季節を味わう!特別な日本酒の種類を紹介!【春酒・夏酒・ひやおろし・新酒】

前回の記事「日本酒は酒器と愉しむ!代表的な素材の特徴や選び方を解説!!」では、日本酒を飲む時に使う『酒器』について解説しました。

これまでの記事では日本酒に関する基礎的知識について解説・紹介してきましたが、今回の記事からは日本酒の楽しみ方の基礎知識について解説・紹介していきたいと思います。
今回は、『季節ごとのお酒』ついて紹介していきたいと思います。

 

日本は豊かな自然に恵まれ、四季の違いがはっきりとしています。

食文化は、その国の風土と密接な関係を持って発展するものですが、四季の違いが明確な日本では、食において「季節感」というものが重要視されてきました。

例えば、日本料理では、春はたけのこ、夏は枝豆、秋はきのこ、冬は大根、と季節ごとに収穫される「旬の食材」を使った料理が提供されます。

そのように「季節感」を重視する日本においては、食文化の重要な要素であるお酒、日本酒にも「季節感」があります。

そこで、今回は季節で味わう特別な日本酒と題して、季節ごとに造られるお酒について紹介していきたいと思います。

 

Contents

春は「春酒」を楽しむ

【代表的な春酒】

  • 澤乃井 本醸造 花見新酒
  • 大山 特別純米酒 樽酒 春ラベル
  • 千代寿 純米吟醸 春しぼり など

日本酒の中には、春限定の商品が存在します。
こうしたお酒のことを「春酒」と呼んでいます。
春酒の特徴を以下にまとめてみました。

【春酒の傾向】

  • 春(主に桜)を連想させるボトルやラベル
  • 春を思わせる華やかな香りを持っている など

春酒で一番よく見られる傾向は、桃色やピンクのボトルまたはラベルであること。
春を一目で感じられるピンク色の外観は、「花見」や「卒業式」「合格祝い」などのイベントのイメージにつながるため、好んで使われています。

また、ボトルやラベルなどの外観だけでなく、特殊な酵母や麹菌を使って華やかな香りを持せたり、さらには、お酒の色自体を桃色にしたお酒などもあります。
こうしたお酒は、味のタイプでいうと薫酒に当てはまる味わいであることが多いです。

春は、寒い季節が過ぎて、新しいことが始まり、希望や期待が高まり、心が躍る時。
そんな季節には、華やかな香り・軽やかな味わいの薫酒がピッタリ!
春の食材である、山菜やタケノコなどとの相性もよいです。

 

夏は「夏酒」を楽しむ

【代表的な夏酒】

  • 澤乃井 夏ノ純米酒
  • 酒呑童子 夏の純米吟醸
  • 出羽ノ雪 純米吟醸 夏酒 など

夏酒は、夏季限定で提供されるお酒のことです。
この名称が付けられたのは2007年頃といわれています。
夏酒の傾向を以下にまとめてみました。

【夏酒の傾向】

  • 夏を連想させるボトルやラベル
  • すっきりとした軽快な味わい
  • 爽やかな酸味を持っている

夏酒は、青や水色、緑や透明など夏を思わせる爽やかなボトルが多いです。
また、ラベルも夏向けにカジュアルなデザインが描かれています。

味わいの傾向としては、すっきりと軽快な味わいであること。
また、適度に爽やかな酸味があることです。
味のタイプでいうと爽酒に当てはまります。

夏といえば、キンキンに冷えた炭酸飲料やビールを一気に飲んで、プハーッ!とやって爽快感を得るのが風物詩ですが、日本酒でも、それに近いような爽快感を得られるようにと、夏酒は、スッキリ軽い味わいと爽やかな酸味を持たせたお酒に仕上げられているのです。

ただ、日本酒はビールの倍以上のアルコール度数であることが多いですから、一気にたくさんの量を飲まないように気を付けてくださいね。

夏酒は、6月下旬から7月上旬ころになると、酒販店や飲食店での提供が始まります。
夏酒をお店などで購入して自宅に持ち帰って保管する場合は「紫外線」に気をつけてください。

夏酒の淡いボトルは紫外線を吸収しやすく、環境によってはすぐにお酒の風味が劣化してしまいます。
屋外でお酒を持ち歩く時はなるべく日光に当てないように気を付け、自宅では紫外線の届かない暗い場所で保存するように心がけましょう。

 

秋は「ひやおろし」を楽しむ

【代表的なひやおろし】

日本酒の秋の季節商品といえば、「ひやおろし」です。
9月〜11月頃の日本酒として定番化しています。

ひやおろし自体は、江戸時代から存在した技法でしたが、保存性に問題があり、酒造近くの人しか飲めない貴重品であったとされています。
ほかにも、戦前の兵庫県・灘で生産される純米酒に多い呼称だったという説もあります。

 

ひやおろしはどんなお酒?

現在では、秋の定番となりましたが、ひやおろしは1980年代に株式会社岡永(日本名門酒会)が展開したことがきっかけで急速に広まりました。

通常、日本酒を造る際には、お酒の味を劣化させる「火落ち菌」の繁殖を防ぐために、お酒を60~65℃ほどで加熱し殺菌する『火入れ』と呼ばれる作業を2回行います。
この『火入れ』は、春先に1回、そして、秋なってから濾過または瓶入れの後に1回行われます。

ひやおろしは、この2回の火入れの内、濾過または瓶入れの後の火入れを行わない、『生詰め』という状態で出荷されるお酒のことをいいます。

出荷時の目安は、夏を越して外と貯蔵庫の温度が同じ程度になったときとされていて、2度目の火入れをせずに「生=冷や」のまま「出荷する=おろし」たことから、「ひやおろし」と呼ばれたとされています。

味わいの傾向としては、お酒が夏の間にじっくりと熟成されているため、まろやかな味わいとなっていることが多いです。

ひやおろしは製法上、味のタイプでいうと「醇酒」に該当するものが多いはずですが、酒税法(※1)酒類業組合法(※2)に規定がないため、大吟醸・吟醸酒・本醸造酒・無濾過生原酒・古酒規格のひやおろしが存在します。

ひやおろしは秋に出荷されるお酒だけに、秋の食材との相性が抜群です。
例えば、秋刀魚やカツオ、寒ブリなど、濃厚な味わいの食材とひやおろしの旨味は調和するため、秋にしか楽しめない贅沢な味わいを感じられます。

※1 酒類に税金を課すことと、お酒の製造や販売業の免許に関して定めた法律。酒類の定義・分類・品目・税率などが定められている。
※2 正式名は「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」。国が酒税を確保するため、お酒の製造・販売業者が組合を設立することを認めると同時に、酒類業組合を通じて様々な決まりを製造・販売業者に守らせるための法律。地理的表示に関する表示基準、特定名称酒の表示などに関する規定もこの法律で定められている。

 

さらに熟成された「寒おろし」を楽しむ

【代表的な寒おろし】

  • 浦霞 特別純米酒 寒おろし
  • 若竹 特別純米原酒 寒おろし
  • 大七 純米生酛 寒おろし など

秋の季節商品である「ひやおろし」は有名ですが、実はさらに熟成させた「寒(かん)おろし」が存在します。

主に、立冬辺りから出荷される「寒おろし」は、「ひやおろし」よりもさらに時間をおいてから出荷されるため、たっぷり熟成させたことによる豊かな旨味が特徴的です。
日本酒の味のタイプでいうと醇酒や熟酒に当てはまるお酒が多いです。

コクのある日本酒が好きな方は、ぜひ寒おろしも体験してみてください。
より深い日本酒の味わいを楽しめるでしょう。

 

冬は「新酒」を楽しむ

【代表的な新酒】

新酒は、酒造年度内(7月1日〜翌年6月30日)に造られ出荷されたお酒のことで、主に、12月〜2月頃に店頭に並びます。
12月〜1月頃は主として「本醸造酒」や「純米酒」、1月〜2月頃は主として「吟醸酒」や「大吟醸酒」が登場します。

 

知っておきたい酒造年度のこと

新酒を知るにあたっては、酒造年度についての知識も知っておくとよいでしょう。
酒造年度とは、日本酒製造業界の年度の区切り方で、7月1日から翌年の6月30日までを1酒造年度としています。

日本の官僚機構も、少なくとも、管理人が過ごしてきた金融業界を統べる金融庁は、日本酒業界と同じく、7月1日から6月30日までを「事務年度」としていて、この事務年度ごとに施策を実施したり、人事異動を行ったりしています。

ちなみに、金融庁は大蔵省、現在の財務省から切り出された官庁で、金融庁の地方における出先機関は「『財務』局」、酒造業界を監督しているのは、財務省の下に置かれている「国税庁」です。
そんなことを知っていると、『酒造年度』というものも、監督官庁である国税庁、ひいては財務省とかに関連があるのかななどと邪推が働きますね。

それはさておき、酒造年度は、英語の「Brewery(醸造)Year(年度)」の頭文字を取って”BY”と表現します。

例えば、「30BY」または「平成30BY」と書かれていたら平成30年が酒造年度。
「25BY」または「平成25BY」」と書かれていたら平成25年度が酒造年度となります。

今年2019年は、元号が平成から令和へと変わった年ですが、令和元年が酒造年度の場合は「1BY」または「令和1BY」と表現します。
なお、酒蔵によっては西暦(2010BYや2005BYなど)で表現することもあります。

 

新酒は「しぼりたて」や「初しぼり」とも呼ばれる

話が逸れましたが、新酒の話題に戻りましょう。
新酒は、「しぼりたて」「初しぼり」とも呼ばれます。

「しぼりたて」とは、米と麹、水、酒母が入り混じった醪が、アルコール発酵によってお酒が造りだされた後に、その醪を絞ることで得られるお酒を、手を加えずにすぐ出荷した新酒のことです。一方の「初しぼり」は、その「しぼりたて」の中で最初に絞られたお酒のことをいいます。

これらのお酒は、お酒を造った酒造年度内で最初に造られているため、併せて新酒と呼びます。
新酒は火入れをしない「生酒」や、割水をしないためアルコール度の高い「原酒」で提供されることが多いです。

そんな、新酒は新鮮で飲みやすい味わいのものが多く、初めて飲む方にも適しているお酒です。
味のタイプでいうと爽酒や薫酒、醇酒に当たるものが多いです。
ただ、その若々しい味わいから、ある程度日本酒に精通した方にとっては、物足りない味わいと言われることもあります。

 

まとめ

今回は、季節で味わう日本酒と題してそれぞれの季節に特有の日本酒を紹介してきました。

日本酒には、造られた季節によって異なるお酒が存在しており、四季の移ろいによって味わいが変化するものがあります。
一年を通じて流通しているお酒とは異なり、こうした日本酒は、その季節にしか味わえません。

日本には「四季折々」という言葉がありますが、日本の自然は春夏秋冬、それぞれの季節で、それぞれ異なる様相を呈してくれます。
その豊かな四季が日本の文化の特徴にも影響を与えています。

そうした日本の自然の移り変わりを反映して、日本のお酒である日本酒も、四季折々、それぞれの季節で異なった味わいを提供してくれます。
皆さんも、それぞれの季節にだけ楽しめる日本酒をぜひ味わってみてください。

 

次回は、第9回「季節のイベント別!その場に適した日本酒の選び方やおすすめを解説!」です。

 

【参考文献】
日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI) 著『新訂 日本酒の基』 NPO法人FBO 2018年

 

  もしお気に入りいただけましたら、投げ銭などしていただけると、大変、嬉しいです♪
投げ銭
   

→次の記事へ

←前の記事へ

↑「日本酒事始め」Topへ

↑「メニュー」Topへ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

関連記事

コメント (0)

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

Archives

スポンサードリンク

 

ページ上部へ戻る