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【日本酒事始め】季節の食材×日本酒!旬の組み合わせでワンランク上の味わいを楽しもう!
- 2019/11/26
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前回の記事「季節のイベント別!その場に適した日本酒の選び方やおすすめを解説!」では、季節のイベントごとに、どんな日本酒を選ぶとよいのかについて紹介しました。
今回の記事では、『旬の食材』を切り口にして、どんな日本酒がおすすめなのかを紹介していきます。
日本の食文化の中では『旬の食材』というものが重視されます。
今では、様々な技術の発達のおかげで一年中手に入る食材が多くあり、『旬』というものを意識しづらいところがありますが、四季の違いがはっきりとしている日本では、昔から、その季節にしか手に入らない食材や、その季節に最もおいしくなる食材を使って、その食材の良さを最大限に引き出し、その季節感を満喫できる料理を提供することが意識されてきました。
季節の食材は、栄養価が高く健康にもよいと言われています。
旬の時期が近づくと、思わず食べたくなる食材は多いですよね。
前回の記事では、それぞれの季節に合うお酒はこの味のタイプ、というのをご紹介しましたが、今回は、それを踏まえた上で、”季節の食材×日本酒”と題して、旬の食材に適した日本酒を紹介していきます。
季節の食材と適切な日本酒を組み合わせれば、ワンランク上の味わいを楽しむことも可能ですよ。
Contents
季節の食材×日本酒 春編
春に旬を迎える食材をまとめてみました。
【春に旬を迎える野菜類・果物類・魚介類】
野菜類 | 果物類 | 魚介類 |
山菜各種
菜の花 そら豆 アスパラガス タケノコ など |
イチゴ
清見オレンジ ハッサク デコポン 甘夏 など |
タイ
アサリ サザエ ホタルイカ しじみ など |
山菜各種
主に、日本料理で使用されることの多い、タラの芽やフキノトウ、コゴミなどの山菜。
料理としては、
- タラの芽:天ぷら、白和え、ゴマ和え
- フキノトウ:天ぷら、おひたし、あえ物、フキノトウ味噌
- コゴミ:天ぷら、胡麻和え
などが挙げあげられますね。
山菜は特有の清涼な香りと爽やかな苦味を持っています。
そのため、日本酒を合わせる時は、味のタイプのなかでも、同じく香り高くシンプルな味わいを持つ「薫酒」と合わせるとよいでしょう。
山菜は2~4月、野生のものは3~4月に市場に出てきますが、この時期には、大吟醸酒や吟醸酒系の新酒が販売されます。
これらのお酒は「薫酒」に当たるものが多いです。
どちらも春にしか味わえない組み合わせなので、ぜひ味わってみてください。
タイ
タイは一年中見かける魚ですが、桜の咲く時期に穫れるタイは『桜鯛』と呼ばれて重宝されます。
桜の咲く頃にタイは産卵期を迎え、オスはメスを惹きつけるために、紅色の鮮やかな体に桜が散ったような白い斑点が浮かんだ美しい見た目になります。
そして、産卵に備えて、脂がのっているため、他の時期に比べて美味しいとされています。
タイを使った料理としては、『刺身』『塩焼き』『鯛めし』『煮付け』『しゃぶしゃぶ』などがあげられるでしょうか。
一般的に、タイを使った料理は、タイの繊細な味わいを活かしたものが多いため、お酒を合わせる時には、そのような繊細な味を損なわないお酒を選択します。
日本酒の味のタイプでいうと、味わいがシンプルなものがよく、これに該当するのは「薫酒」や「爽酒」になります。
具体的には、「吟醸」「大吟醸」「純米吟醸」「純米大吟醸」「本醸造」などの名称のお酒にこのタイプが比較的多いです。
季節の食材×日本酒 夏編
夏に旬を迎える食材をまとめてみました。
【夏に旬を迎える野菜類・果物類・魚介類】
野菜類 | 果物類 | 魚介類 |
枝豆
トマト きゅうり オクラ ミョウガ など |
スイカ
さくらんぼ メロン モモ ラズベリー など |
アユ
カツオ イワシ コハダ アナゴ など |
アユ
6月になると天然鮎が解禁されます。
鮎を使った料理としては、『活造り』や『鮎ごはん』、さらには『鮎ラーメン』などもありますが、やはり、なんといっても『塩焼き』でしょう。。
鮎は、別名「香魚」とも呼ばれていて、その身からは果物のような香りが感じられます。
某グルメ漫画(『美味しんぼ』)では、鮎は獲った川によって味が異なり、とあるお金持ちが自分の出身地を流れる四万十川で捕れた天然のアユを食べて感動する、というエピソードがありました。
以前の記事にも書いたように、香りは味の重要な要素で、取れた川によって味が異なるということは香りも異なるということでしょうから、なるほど、『香魚』と言われるのも納得です。
そんな果物のような香りのするアユには、同じく果物のような香りを持っていることの多い「薫酒」がおすすめです。
具体的には「吟醸」「大吟醸」「純米吟醸」「純米大吟醸」などの名称を持つお酒にこのタイプが多いです。
先程の漫画のエピソードに四万十川のアユが出てきましたが、この川の名前を冠し、かつ、薫酒タイプである「四万十川 純米吟醸」というお酒があります。
出身地の川で捕れたアユに、出身地で造られたお酒。
そのお金持ちの方にこのお酒も一緒に出していたら、感動が2倍どころか2乗になったかもしれませんね(笑)
カツオ
春から初夏にかけて出回る初鰹。
この時期になると、飲食店やスーパーの生鮮食品売り場などでよく見かけるようになります。
カツオは毎年北上・南下をする魚で、3月頃から北上を開始して、5~6月頃に本州辺りに、8~9月初旬ごろに東北~北海道に移動し、9月からはまた南下していくという習性があります。
この5~6月に穫れるカツオを「初鰹」、9月ころに穫れるカツオを『戻り鰹』といいます。
『戻り鰹』の方が美味しく秋が旬だ、というようなことも言われますが、一般的には、夏が旬の魚とされているようです。
鰹料理と言えば、『刺身』『のっけ盛』『竜田揚げ』など色々な料理がありますが、やはり、『かつおのたたき』に尽きるでしょう。
基本的に、鰹料理はどのタイプの日本酒とも相性がいいとされていますが、初夏の初鰹に合わせるなら、「爽酒」との組み合わせがよいでしょう。
「爽酒」はシンプルな味わい・穏やかな香りが特徴で、口の中をスッキリ・爽快にさせてくれる傾向があるお酒なので、カツオの少し血の気のある味を洗い流してすっきりと食べさせてくれると思います。
カツオと言えば、カツオのたたき、カツオのたたきといえば土佐・高知県です。
高知県は酒蔵の多い県でもあり、色々な銘酒がありますので、カツオのたたきを食べる時には、高知県産のお酒と合わせてみると、郷土料理感がさらに高まっておいしく感じられるのではないでしょうか。
ご参考まで、以下、高知のお酒です。
・純米吟醸 四万十川
・土佐鶴 本醸造 本醸辛口
・酔鯨 純米酒 香魚
光り物(アジ、イワシ、コハダなど)
肌が青白く光っている魚のことで、アジ、イワシ、コハダなどが代表的ですが、これらの魚は夏が旬とされています。
光り物の料理といえば、『刺身』『(あじの)たたき』『なめろう』『フライ』などがあげられるでしょうし、また、寿司屋さんに行くと、光り物の握りは酢締めされていることが比較的多いです。
これは、光り物の魚は概して、比較的小さいものが多く、鮮度の低下が早いため、昔から、魚の身に塩を振り、水洗いした後に酢につけて保存する酢締めが行われていたためです。
光り物は刺身であれば脂がのっていますし、また酢締めにした場合には、酢の爽やかな酸味が特徴的になります。
それに合わせる日本酒としては、油を切って口の中をさっぱりとさせてくれたり、爽やかな香味を持っている「爽酒」がよいでしょう。
鱧(ハモ)
主に関西で夏の風物詩として欠かせない食べ物といえば鱧料理です。
鱧は脂分が少なく、繊細で上品な味わいを持つことから、京料理では特に重宝されてきました。
西日本各地で鱧は水揚げされますが、小骨が多くて食べにくいため、それほど消費されていませんが、京料理では、「骨切り」という、鱧の身に細かく包丁を入れて小骨を短く切る技術でそうした問題を解決し、『湯引き』や『天ぷら』などにして提供されます。
鱧の繊細で上品な味わいには、シンプルな味わいが特徴の「薫酒」や「爽酒」を合わせるのがいいでしょう。
夏の納涼料理
素材本来の味わいを楽しめる夏の納涼料理。
冷奴や枝豆、たたきキュウリ、冷やしトマトなどには「爽酒」を合わせるのがよいでしょう。
「爽酒」は冷やすとそのすっきり感が増し、シンプルな味わいで素材の味を邪魔せず、また、香りも控えめなので、冷えて香りがそれほどしない上記のような料理と調和しやすいです。
暑い時期には、冷えた日本酒と納涼料理で涼を楽しみましょう。
アナゴ
アナゴは夏を代表する食材です。
たっぷりとのった濃厚な脂のおいしさが人気ですよね。
料理としては、『かば焼き』『煮アナゴ』など、濃厚で甘みのあるたれで味付けした料理でいただくことが多いですが、『天ぷら』『湯引き』などでたべるのもよいですね。
そんな、脂の旨みが特徴的なアナゴには脂を中和してくれる「爽酒」が適していますが、濃厚な味わいに同調させるという楽しみ方もあり、その場合には味わい豊かな「醇酒」や「熟酒」と合わせてみるのもおすすめです。
鰻
鰻は、土用の丑の日をはじめ、夏のスタミナ源として欠かせない食べ物です。
主に、うな重として食されることが多いため、お酒とともに味わう機会は多くないかもしれません。
日本酒と一緒に味わうのであれば、料理としては『鰻の蒲焼』が適しています。
蒲焼の濃厚な味わいには、同じく濃厚な味わいが特徴の「熟酒」がおすすめです。
山椒をかけて食べればより調和した味わいを楽しめます。
季節の食材×日本酒 秋編
秋に旬を迎える食材をまとめてみました。
【秋に旬を迎える野菜類・果物類・魚介類】
野菜類 | 果物類 | 魚介類 |
かぼちゃ
キノコ類 ギンナン サツマイモ じゃがいも など |
かき
クリ すだち ぶどう ナシ など |
サンマ
サケ サバ シシャモ スルメイカ など |
キノコ
秋を代表する食材であるキノコも、日本酒との相性がいいです。
キノコの豊かな味わいには、同じく味わい豊かな「醇酒」がおすすめです。
秋には、季節商品として「ひやおろし」が出荷され、そのまろやかな味わいは、キノコとよりマッチします。
また、キノコ類は豊かな味わいだけでなく、その香りも魅力の一つですが、同様に、豊かな味わいだけでなく豊かな香りも併せ持っていることが特徴的な「熟酒」も適しているでしょう。
特に、「熟酒」はキノコを使ったフレンチやイタリアンとマッチするようです。
サンマ
秋に旬を迎える食べ物といえばサンマです。
主に、塩焼きで食べるサンマは、落語「目黒のサンマ」にもあるように、あの濃厚な脂の味わいが特徴です。
また、身だけではなくハラワタ部分の苦味や旨味も見逃せません。
特に、ハラワタ部分は「醇酒」との組み合わせに適しており、日本酒のすばらしさを堪能できるでしょう。
少し寒い日には、「燗酒」で楽しむとより秋らしさを感じられるのでおすすめです。
ジビエ
ジビエとは、鴨や猪、鹿などの野生動物を意味するフランス語です。
旬の時期は、冬眠や冬の寒さに備えて栄養や脂肪を蓄える秋と言われています。
基本的に、西洋料理店で味わえる食材ですが、最近ではジビエを扱うお店が増えてきており、都内などでは、ジビエ専門店なども見かけます。
ジビエに合わせる日本酒としては、「醇酒」や「熟酒」が挙げられるでしょう。
どちらも、ジビエと同じように、豊かな味わいが特徴的なお酒なので、同じような傾向のあるジビエの味と相性が良いと思われます。
バターやチーズを使ったジビエ料理なら、「醇酒」の中でも同じく乳酸菌に由来する風味を持つ、「生酛造り」の日本酒がおすすめです。
季節の食材×日本酒 冬編
冬に旬を迎える食材をまとめてみました。
【冬に旬を迎える野菜類・果物類・魚介類】
野菜類 | 果物類 | 魚介類 |
カリフラワー
小松菜 しいたけ ブロッコリー レンコン など |
すだち
みかん ゆず りんご など
|
カキ
カニ アワビ キンメダイ タラバガニ など |
鍋
冬を代表する料理といえばやはり鍋でしょう。
冷蔵庫の肉・魚・野菜をお湯に入れ、ポン酢などの調味料と薬味だけでいただく寄せ鍋などの手軽なものから、フグ、すっぽん、カニなどの高級食材を使ったものまで、さまざまな種類が存在します。
基本的に鍋料理と日本酒の相性はよいですが、種類によって組み合わせを変えるとさらにおいしく味わえます。
以下に味のタイプ別に適した日本酒をまとめてみました。
【日本酒の味のタイプと相性がいい鍋の組み合わせ】
- 爽酒:魚介類のしゃぶしゃぶ、水炊き
- 薫酒:フグちり、蟹鍋
- 醇酒:おでん、寄せ鍋
- 熟酒:牡蠣の土手鍋、すき焼き
同じ具材を使っていても、鍋のベースとなるスープの味わいによっても、日本酒との相性が異なってきますので、どんな味の鍋とどんな日本酒を組み合わせるとどんな風に相性が変わるのか、色々な日本酒と組み合わせてみるのも楽しいのではないでしょうか。
カキ
海の恵が凝縮されて形となったような、豊かな味わいが美味しいカキ。
料理も、『生カキ』『蒸しカキ』『焼きカキ』『カキフライ』『カキの清蒸』など、色々なものがありますよね。
そんな風味豊かなカキですが、海の恵みたっぷりな分、生臭さが気になる人もいると思います。
よく言われる話ですが、フランス料理ではカキと白ワインの組み合わせが最高とされるが、白ワインだとカキの生臭さを感じてしまうことがあるが、日本酒であればカキの生臭さを引き出したりせず、旨みだけを引き出してくれます。
牡蠣は、料理法によっていろいろな楽しみ方のできる食材で、合わせるお酒も料理法によって変えていくことができます。
以下に味のタイプ別に相性の良いカキ料理をまとめてみました。
【日本酒の味のタイプと相性がいいカキ料理の組み合わせ】
- 爽酒:生カキ
- 薫酒:香草類を使用したカキの前菜
- 醇酒:焼きカキ
- 熟酒:カキの土手鍋
カキを使った料理は他にも色々とありますから、どんな料理法とどんな日本酒が相性が良いのか、調べてみるのも楽しいのではないでしょうか。
まとめ
今回の記事では、季節の食材と日本酒の組み合わせを紹介してきました。
季節が変われば旬の食材も変わり、それによって、相性の良い日本酒の味のタイプも異なってきます。
相性の良い季節の食材と日本酒を組み合わせて味わえば、相乗効果でよりおいしく感じられます。
日本は四季の変化がはっきりとした風土であり、それゆえ、日本の文化の中ではその季節に特有の行事や料理が発展してきました。
色々なことで忙しい現代、効率が重視されて色々なものが均質化している傾向もあるように感じられますが、せっかくの四季折々の料理と、それに合うお酒があるのですから、休日など、少し息を抜ける時には、その時々にしか味わえない料理とお酒を味わうことで、日々の疲れを癒して、明日の元気の素を蓄えるのもよいのではないかなと思います。
みなさんも、ぜひ、季節の料理とお酒で、その季節を味わってみてください。
【参考文献】
日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI) 著『新訂 日本酒の基』 NPO法人FBO 2018年
次回は、第11回「お酒と料理の「合う・合わない」とは?知っておきたいお酒と料理の相性の基礎知識」です。
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