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【日本酒事始め】お酒と料理が「合う・合わない」とは?知っておきたいお酒と料理の相性の基礎知識
- 2019/11/26
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前回の記事「季節の食材×日本酒!旬の組み合わせでワンランク上の味わいを楽しもう!」では、季節の食材に合う日本酒をご紹介しました。
今回の記事では、『お酒と料理の相性』の基礎知識についてお話していきたいと思います。
さて、突然ですが、みなさんはお酒ってどのように飲んでいますか?
飲み会でわいわいしながら飲んだり、音楽や映像を楽しみながら静かに飲んだり、一人黙々と飲んだり、食事の時に飲んだりと、色々な飲み方・楽しみ方があると思いますが、やはり、食事をしながら色々な料理と一緒に飲むということが一番多いのではないでしょうか。
色々な料理を味わいながらお酒を楽しむ場合、このお酒はこの料理によく合うとか、この料理にこのお酒は合わないとかいうことを聞くことがあります。
例えば、「チーズに合うのは赤ワイン」とか「カキには白ワインが合う」「数の子とワインは合わない」などと言われるのを聞いたことがあるかもしれません(ワインの相性ばかりで恐縮です)。
では、その「合う・合わない」っていったいどういうことなのでしょうか、ということに関する基本的な知識を解説するのが今回の記事の主題です。
人間の感覚に関することなので、当然のことながら、人によって感じ方は異なりますし、そもそもの話、感覚的なことなので、直感的に合うと思ったものが「合う」であり、合わないと思ったものが「合わない」なんだ、でいいと思うのですが、世の中のたいていのことには『セオリー』があり、多くの人がそういうものだねと一応納得する最大公約数的なものが存在します。
そして、何か特定のことを始める時には、まずその最大公約数的な『セオリー』を知ることから始めると、比較的簡単にその特定のことを習得でき、さらには、そのセオリーを離れて、他の人では考えもつかなかった自分なりの楽しみ方をできるようになったりするものです。
そこで今回は、自分なりのお酒と料理の楽しみ方を見つけるための『セオリー』として、お酒と料理の「合う・合わない」に関する基礎知識についてお話していきたいと思います。
Contents
お酒と料理の「合う・合わない」ってどういうこと?
お酒と料理の「合う・合わない」、組み合わせや相性のことをフランス語では「マリアージュ」、英語では「ペアリング」と呼びます。
「マリアージュ」は「mariage」とつづります。
そういえば、英語には「marriage(結婚)」という単語がありますが、ほぼ同じつづりの単語だけあって、「mariage」も「結婚」というのが第一義、料理とお酒(ワイン)の組み合わせのことは第二義になります。
料理とお酒の組み合わせに「結婚」という言葉を当てはめるとは、フランス人の言葉のセンスが光りますね。
一方、「ペアリング」は「pairing」とつづり、「つがい」をつくること、対(ペア)にすることをさします。
「マリアージュ」というある意味、詩的な表現に比べると、即物的・現実的な言葉が選択されていて、フランス人と英米人の言語に対する感覚の違いを感じますね。
「マリアージュ」と「ペアリング」は、その言葉の元々の意味から、「マリアージュ」は料理とお酒が作りだす新たな関係性のことを指し、「ペアリング」は単に料理とお酒を一緒にすることそのものを指すという違いがあるのですが、まあ、細かいことは気にせずに、まずは、お酒と料理の相性のことを「マリアージュ」「ペアリング」というとおぼえておいていただければ大丈夫です。
相性が良いものと悪いもの
さて、その料理とお酒の相性、マリアージュ・ペアリングが、良いものを「合う」、悪いものを「合わない」というわけですが、どういうものが「相性が良い」でどういうものが「相性が悪い」のでしょうか。
「マリアージュ」「ペアリング」という言葉のそもそもの意味から考えるとわかりやすいと思います。
例えば、「相性の良い結婚(マリアージュ)」という言葉からはどんなことを想像するでしょうか?
夫婦二人の性格や考え方・価値観に似ている、明るく楽しく素敵な家庭を作り出している、お互いに補い合い助け合っていけるとかではないでしょうか。
そこから、料理とお酒の「相性が良い」「合う」とは以下のようなものを指します。
- 香りや食感、味わいが同じような感じである(調和)
- 組み合わせるとよりよい風味・新しい風味が生まれる(創造)
- 料理の過不足を補ってくれる(補完) など
逆に、「相性の悪い結婚(マリアージュ)」という言葉からはどんなことを想像するでしょうか?
夫婦二人の性格や考え方・価値観が対立している・衝突が多い、暗くて幸福感のない家庭を作り出している、お互いの良かったところをダメにしてしまう、とかでしょうか。
そこから、料理とお酒の「相性が悪い」「合わない」とは以下のようなものを指します。
- 香りや食感、味わいに変化がない・交わらない(平行)
- 組み合わせると不味くなる、不快な香り、食感、味わいになる(劣化)
- お互いの良さを消してしまう(相克)
簡単にまとめると、
お酒と料理が合う(相性が良い):調和・創造・補完の関係にあるもの
お酒と料理が合わない(相性が悪い):中立・劣化・相克の関係にあるもの
ということになるでしょうか。
以下、それぞれについてもう少し詳しく見ていきましょう。
お酒と料理の相性が良い例
これには、調和・創造・補完の3つの関係がありました。
それぞれの例についてみていきましょう。
調和
調和は、「要素の同じもの同士がお互いを打ち消しあうことなく共存している状態」を表します。
香りや食感、味わいが調和していると「違和感がない」「一体化する」「バランスが良い」などと表現されることがあります。
なお、この記事の参考文献である「新訂 日本酒の基」では「同調」と呼んでいます。
以下に簡単な調和の例をまとめてみました。
【香りの調和】
「ポルチーニのような香りを持つ『三井の寿 ポルチーニ』」×「きのこたっぷりサラダ」
【食感の調和】
「シャープな飲み口を持つ『日本刀 純米吟醸 超辛口』」×「シャキっとした食感の野菜類」
【味の調和】
「旨味の明確な『醇酒』」×「出汁がたっぷりときいているおでん」
なお、香りや食感、味わいは、複数の要素が重なることでより相性が良くなります。
もっとも、どちらも単純に、甘い、濃厚、酸味が強いなどといった場合には、「同調」してもくどくなりすぎたり、刺激が強すぎたりして「調和」しないことが多いです。
東洋では『過ぎたるは猶及ばざるが如し』、西洋では『徳とはメソテース(中庸)に他ならない』というように、極端なものではなく、バランスが取れた状態「調和」が大事だということですね。
料理とお酒の相性が良いといった場合には、この「調和」していることを指している場合が多いようです。
創造
本来、同調しない、同じ方向性にない、特徴の異なるお酒と料理を組み合わせることで、新しい風味が生まれることがあります。
例えば、「フォアグラ」と「極甘口ワイン」は、濃厚な脂の風味と強い甘みのある風味を組み合わせて新しい風味を感じさせる代表的な組み合わせとして有名(だそう)です。
管理人はそんなに高級なものを食べたことはないので、もっと卑近な例を出すと、「特別純米酒 森泉」という、酸味のあるフルーツを感じさせるような香りと米の旨みを存分に感じられるお酒と、ワサビのツンと鼻を抜ける辛味が特徴的な「貝わさび」を合わせると、お酒と貝の旨み、そしてワサビの旨みが一体となって、上品で洗練された旨みへと昇華したりします。
さらに身近な例を出すと、少し的外れかもしれませんが、「プリンに醤油でうに」とか「キュウリにハチミツでメロン」とか(笑)
そんなふうに「異なる味の傾向のものを組み合わせることで、予期せぬ新しい味が生まれる」、そうした料理とお酒の組み合わせも相性が良いものと言えるでしょう。
補完
料理を食べた際に感じる過不足を整えて良い状態にしてくれることを「補完」としてみました。
具体的な効果としては、「料理の脂っこさを洗い流す」「料理の生臭さを抑える」などが挙げられます。
お酒に含まれるアルコールの刺激の効果などにより、料理の脂っこさなどを洗い流すことを「ウォッシュ」や「リセット」と呼びます。
舌に残る脂っこさなどをお酒で洗い流すと、味覚がリフレッシュされて料理が進むため、相性の良い組み合わせといえます。
お酒であればなんでもよいわけでもなく、やはり料理の組み合わせによっては合わないケースもあるようです。
例えば、「羊料理と赤ワイン」や「キャビアとウォッカ」などは合いにくいといわれています。
基本的には、お酒や料理の個性を生かす組み合わせが適しているといえるでしょう。
また、特に日本酒には、魚介や海藻料理などの生臭みを抑え、素材の良さを引き出すという特徴があります。
よく言われる話としては、生カキに日本酒を合わせるとカキの生臭さを抑えてその豊かな味わいだけを楽しませてくれるとか言われますよね。
管理人が経験したところでは、塩辛とか、ホヤとか、下手をすると生臭みが出てしまう料理であっても、日本酒と合わせると、その生臭みを抑えて味わいだけを楽しませてくれたというのがあります。
全ての日本酒が魚介類の生臭みを抑えて素材のうまみを引き出してくれる、とは管理人は思っていませんが、これまで経験してきた中では、この生臭さを抑えるという働きを持たなかった日本酒はなかったように思います。
ワインだと、この魚介類の生臭みを抑えるという働きがないものが比較的多くあるようで、それらを考え合わせると、生の魚介類をいただく時は日本酒を選択すると外れが少ないといえそうですね。
お酒と料理の相性が悪い例
これには、中立・劣化・相克の3つの関係がありました。
それぞれの例についてみていきましょう。
中立
中立は、お酒と料理を組み合わせても、お互いに影響がない組み合わせのことです。
この記事の参考文献である「新訂 日本酒の基」では「平行」と呼んでいます。
お互いに影響をしないだけなので、相性が悪いとも言い切れません。
ただ、相性が良いとは言えないので、「相性が悪い」の方に分類されているようです。
「世の中には2種類の人間がいる、〇〇である人間と〇〇でない人間だ」というのと同じですね。
管理人が経験しているところでは、お酒と料理の組み合わせって、この『平行』の関係にあるものがほとんどなのではないかなと思っています。
なので、個人的にはこれを「中立」と呼んで、相性が良くも悪くもないものとして扱っており、管理人が書いているこのサイトのブログ記事では、そんな風に表現しています。
劣化
劣化は、お酒や料理を単独で食べても感じない不快な香りや食感、味わいが出る組み合わせのことをいいます。
システム開発で、システムの不具合を直したり、改良するために改修を行う際に、その改修が他の部分に悪影響を与えて、改修前より不具合が多くなったり、使いづらくなることを「Degrade(ディグレイド、略して『デグレ』)」というのですが、そのイメージに被るなと思い、そのデグレの訳語「劣化」を当ててみたものです。
なお、この記事の参考文献である「新訂 日本酒の基」では「反発」と呼んでいます。
例えば、「白ワイン」と「カズノコ」。
管理人はやったことがありませんが、NAVERのまとめ記事では、この組み合わせは、最悪の組み合わせとして紹介されていて、口から戻してしまうくらい生臭さを感じる組み合わせみたいですね。
この劣化は主にワインに見られることが多い現象のようです。
「劣化」の組み合わせは、文句なしに「相性の悪い」組み合わせといえるでしょう。
相克
お酒や料理がお互いの個性を消してしまう組み合わせのことです。
この記事の参考文献である「新訂 日本酒の基」や一般的には、「バランスが悪い」と呼んでいます。
「相克」は管理人が勝手に名付けたものですが、このように名付けたのは、他の組み合わせには漢字2字の熟語を当ててきており、これだけ「主語+述語」形式にすると『バランスが悪い』と思ったためです(笑)
それはさておき、この「相克」「バランスが悪い」というのは、例えば、繊細で淡白な白身魚の薄造りに紹興酒やウイスキー、ブランデーのような濃醇なお酒を合わせると、お酒の味の強さが料理の繊細な味を消してしまいます。
また、濃厚な脂が特徴的な「牛カルビ」に「繊細な風味の白ワイン」を合わせると、カルビの脂の濃厚さにお酒の繊細な風味がかき消されてしまい、お酒の味わいが全く感じられなくなります。
こうした組合せのことを、バランスが悪いといいます。
管理人の経験上は、この組み合わせは比較的多く、料理の味がお酒に勝っていることが多い印象を持っています。
たいていの場合、料理の方が主で、お酒の方が従の関係になりますから、料理の味わいを損なわないのであれば、この組み合わせもそんなに悪いものとは言えないような気もします。
日本酒と料理の組み合わせで知っておきたい基礎知識
ここまでは、一般的に「お酒」と料理の組み合わせについて「相性が良い」「相性が悪い」とはどういうことかを説明してきました。
このサイトは「日本酒」のサイトですので、最後に、「日本酒」と料理の組み合わせにおいて、どのような特徴があるのかについても紹介したいと思います。
いわば、日本酒と料理の組み合わせの基礎知識です。
こちらを知っておくと、より相性の良い状態で楽しめると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
日本酒は魚介類特有の生臭さを抑える
「補完」のところでも触れましたが、日本酒は魚介類の生臭さを抑えて素材の味を引き出してくれる働きを持っています。
白ワインとカズノコは最悪の組み合わせ、というお話も書きましたが、これは、ワインと魚介類を合わせると、ワイン、もっと言うと、原料であるブドウに含まれる鉄分と魚介類の血や脂が反応して、特有の生臭みが生まれるためなのだそうです(フェントン反応というそうです)。
一方の日本酒は、原料である米には鉄分が含まれていますが、お酒を造る水には鉄分の少ない水を使うなどして、製造工程の中で鉄分が少なくなるため(栄養成分表示を見ると0mgになっています)、魚介類の生臭みを抑えて、素材の旨味を引き出す効果があります。
そのため、日本酒と魚介類の相性は優れているといわれるわけです。
日本酒は風味の強い料理と好相性
一般的に醤油や魚醤、味噌といった発酵調味料を使用した料理や、なれ鮨、ぬか漬け、ナチュラルチーズといった発酵食品類は風味が強いため、お酒と相性が良くないといわれます。
ただ、日本酒はお酒の中でも風味の強い料理と相性がよいといわれています。
これは、日本酒は旨味が特徴的なお酒であり、これが料理の旨味成分と調和して、おいしさを引き立ててくれます。
特に、日本酒の味のタイプの中では「醇酒」が、風味の強い料理と相性が良いです。
日本酒は酢の味わいと反発しにくい
一般的に酢を使った料理はお酒と合わせにくいといわれています。
酢の強い酸味がお酒の個性を消したり、酢とお酒、互いの酸味や苦みが強調されたりするためです。
その点、日本酒は他のお酒に比べると、酸味や苦味が比較的少ないため、味わいが反発しにくく相性が良いのです。
特に、米酢を使った料理とは、原料が同じであることもあって、相性が良いようです。
日本酒は素材の持つ味わいを引き出す
白身魚や野菜類、豆腐料理などは、味わいが繊細なため、お酒の種類によっては料理の個性を消してしまう可能性があります。
日本酒は、水のように軽快でなめらかな味わいのものも多くあるため、繊細な味わいの料理には、そうした淡麗な味わいのお酒が合うわけです。
繊細な味わいの料理と日本酒と合わせる時には、軽快でなめらかな味わいが特徴の「爽酒」タイプのお酒がおすすめです。
日本酒はスープと同調しやすい
一般的に、お酒とスープ類はどちらも液体であるため、合わせることは少ないです。
日本料理で椀物と日本酒を同時に楽しむ場合、椀物は出汁の旨味が主体なので、同じく旨味が主体の日本酒と同調しやすいです。
旨味の同調は、多くの日本人が好きな組み合わせで、日本酒と日本料理を合わせる際の基本的な考え方になっています。
日本酒は香辛料と相性がいい
日本酒の中でも、スパイスのような香りを持つ「熟酒」は香辛料類と相性が良いようです。
香辛料の強い風味と熟酒の個性的な香りや味わいは同調しやすいため、相性が良いと判断されるようです。
日本酒は乳製品の風味と同調する
コクのある乳製品(バター、生クリーム、チーズ)は、同じくコクのある「醇酒」と相性がいいです。
特に、日本酒の中でも自然界の乳酸菌を使った生酛系酒母のものは、クリーミーな風味を持っており、同じく「乳」の字を持つものに由来するためか、乳製品類とより調和します。
日本酒は果実や香草類の香りとマッチする
果実や香草類を使った料理は、その香りが特徴的です。
これらの料理には、同じく、日本酒の中でも香りの高い「薫酒」と相性がよいようです。
果実・香草類を使った西洋料理やエスニック料理を楽しむときには、「薫酒」タイプであることの多い、吟醸酒や大吟醸酒などを合わせてみるのもよいと思います。
まとめ
お酒と料理の相性について解説してきました。
今回は知っておきたい基礎知識として、お酒と料理の「相性が良い・悪い」というのはどういうことかに力点を置いて解説しました。
そして、日本酒は料理との組み合わせにおいてどのような特徴があるのかを紹介してきました。
基本的には、料理の味とお酒の味の方向性・性質が同じような組み合わせを「相性が良い」と言い、料理の味とお酒の味の方向性・性質が異なる組合せを「相性が悪い」と言うのでした。
そのため、お酒と料理を合わせるときには、旨味たっぷりの料理と旨味たっぷりのお酒のように、料理とお酒の味の方向性・性質が同じになるように選択するのがよい、ということになるわけです。
もちろん、これは基本、「セオリー」であって、味の方向性が同じものの組合せ以外にも相性の良いものはありますので、基本を押さえたら、そうした意外な組み合わせを探してみるのもよいですね。
料理を楽しむとき、日本酒を飲む際には、そうしたことを意識してみると、よりおいしく日本酒と料理を楽しめると思いますので、ぜひ、試してみてください。
【参考文献】
日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI) 著『新訂 日本酒の基』 NPO法人FBO 2018年
次回は、第12回「日本酒と和食!相性の良い組み合わせはどれ?味のタイプ別に紹介!」です。
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