【日本酒事始め】日本酒の味は「4つのタイプ」に分けられる!【画像付きで解説】

前回の記事「すぐわかる!代表的な6種類のお酒の造り方や特徴を解説!」では、日本酒以外のお酒も含めた、お酒の基礎的な知識についてお話しました。
今回からは、そうした知識をベースにして、日本酒についての基礎知識についてお話していきたいと思います。

 

酒屋さんや日本酒を売りにしている飲み屋さんに行くと、「獺祭」「十四代」など、名前の異なる日本酒がたくさん置かれているのを見ることができます。
たいていの場合、お酒を選ぶときには、こういう味のお酒が飲みたい、という希望があって、その希望に合うお酒を選択したいと思うでしょう。

そのお酒がどんな味なのか、それを知るための情報として、日本酒の場合には、ラベルやメニュー、POPなどに、「甘口・辛口」と書かれていたり、「淡麗なお酒」「濃醇な味わい」とかの解説が書かれていたり、または、辛さの指標として「日本酒度」というものが書かれていたりします。

しかし、そうした情報を見て、食事には辛口のお酒がいいから辛口のお酒を買って飲んでみたところ、想像と違って甘かったり、逆に、甘い味わいが好きなので甘口のお酒を飲んでみたところ、甘さを感じなかった、ということを経験したことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、そんな「日本酒の味」に関して解説していきます。

 

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日本酒の味わいは「甘口・辛口」以外にも存在する

「甘口・辛口」といった味わいの感じ方は人によってかなり異なるものなので、お酒の味に関する情報と、実際に飲んでみた感じが違っていた、ということはよく起こるものです。

これは、食べ物の甘口・辛口と、お酒の甘口・辛口では指し示すものが違うからです。

食べ物の場合は、甘口とは「甘みのあるもの」、辛口とは「香辛料の刺激が強いものや塩っ気の強いもの」のことをいいます。

たいていの場合、砂糖などの甘みのある調味料や材料を多く使って甘みの成分が多くなれば味は甘くなりますし、唐辛子などの辛味のある調味料を多く入れれば辛くなり、塩を多くかければ塩辛くなります。

一方、お酒の場合、甘口とは 「糖分が多いもの・アルコールの刺激が弱いもの」、辛口とは 「糖分が少ないもの・アルコールの刺激が強いもの」のことを指します。

前回の記事でも書いていますが、お酒の「糖分」は必ずしも甘いものではありません。
また、お酒には糖分とアルコール以外にも、酸味や旨みなどを感じさせる成分が混じっていて、それらの成分比率などが複雑に絡まって味が変わります。
そのため、糖分が多いから甘く感じる、アルコール分が高いから辛く感じる、というふうには必ずしもならないのです。

こうしたことから、日本酒の味について「甘口・辛口」という切り口から入っていっても、人によって感じ方が違っていたり、そもそも、「甘口・辛口」のイメージが異なっているので、お酒の味について伝える時に誤解が生じやすいのです。

でも、そうなると、日本酒の味について知りたい人にとっては、もう、どうしていいのかわからない、日本酒ってよくわからん、となってしまいますよね。

そこで、日本酒の味について知っておきたいのが、日本酒を「甘口・辛口」ではなく、「香り」や「味わい」で分類する ”香味特性” というものです。

日本酒の味わいを理解するなら「味のタイプ」が欠かせない

この「香味特性」というのは、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI: Sake Service Institute)が考案した日本酒の味に関する分類方法です(「香味特性」というとお堅い感じがするので、このWebサイトのデータベースでは「味のタイプ」という言い方を使っています)。

「日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会」というのは、『日本の酒である「日本酒」「焼酎」の提供方法の研究を中心に酒類の総合研究をおこない、その教育啓発活動を通じて、日本における酒文化の発展および関連業界の支援、そして日本食文化の継承発展に寄与する事を目的とする』団体で、日本酒・焼酎に関する研究や、資格認定などを行っています。

この団体の認定資格には「唎酒師」「焼酎唎酒師」「酒匠」がありまして、管理人はこのうちの「唎酒師」の資格を持っています。

「唎酒師」になるには、A4用紙で500ページくらいあるテキストを読み込んで日本酒に関する知識を身に着け、実際に日本酒を飲んでその味の特徴を体得し、それを文章で表現できるようになり、かつ、お客さんにどんな料理とお酒の組み合わせを提案するかというセールスプロモーション案を立案して文章化できるようになって、かつ、それらが一定程度の水準に達している必要があります。

この一連の、いわば、日本酒の基礎に関する記事は、「唎酒師」のテキストをはじめとする教育プログラムで得たことを、それをベースにしつつ、重要な部分を取り上げて、分かりやすく解説したものになります。

「唎酒師」の教育プログラムでは、日本酒の味や飲み方などについては「香味特性」というものをベースにして解説されているため、今回はこの記事でも「香味特性」について解説するというわけです。

 

。。。などと書いてくると、「香味特性」ってなにやら難しそうに思われますが、そんなに難しいものではありません。

日本酒を、「香り」と「味わい」の組み合わせで4つに分類して、それぞれに「薫酒」「爽酒」「醇酒」「熟酒」という名前を付けているもの、と思っていただければ大丈夫です。

さらに言うと、『「香り」と「味わい」』のことを『風味』といいます。某有名グルメ漫画でも描かれていましたが、人間は食べ物や飲み物の『味』を、「香り」と「味わい」の両方を知覚することで感じ取っています。

例えば、風邪をひいて鼻が詰まった状態、または、鼻をつまんで食べると、食べ物の味をあまり感じなくなります。
これは、「香り」が味を知覚するための重要な要素であるためです。

つまり、

「香り」+「味わい」=「味」

なのです。

そう考えてくると、

「香味特性」=「香り」と「味わい」による分類

ですから、

「香味特性」=「香り」と「味わい」による分類=「味」の分類

で、「香味特性」とは、すなわち、「味」の分類(タイプ)ということができるでしょう。

そこで、この後の説明では、この「香味特性」に代わって、「味のタイプ」という言い方を使っていきたいと思います。

「唎酒師」の教育プログラムでは、この4つのタイプのお酒を飲んで、そのタイプの違いを把握するというものがあります。
やってみると、確かに、それぞれ味の感じが異なっており、振り返ってみると、日本酒はこの4つのタイプに分けられて、その分類の中で、旨みが強い、アルコールが強い、酸味がある、などの特徴があることに気づかされました。

そこで今回は、そんな日本酒の味の特徴がわかる、日本酒の「味のタイプ」について紹介していきます。

これを知ると、自分はどんなタイプの日本酒が好きなのかが分かりやすくなり、お酒を選ぶときに選びやすくなりますので、ぜひ、この日本酒の味のタイプを知って、お酒選びの時に利用してみてください。

 

日本酒の味のタイプは4つに分けられる

日本酒の味のタイプは、”香り”と”味わい”によって「薫酒」「爽酒」「醇酒」「熟酒」の4つに分類されます。

分類の基準は「香りが高い・控えめ」「味わいが豊か・シンプル」の2つの軸です。

それでは、各味のタイプの特徴や、該当する日本酒、適温や相性のいい料理をみていきましょう!

 

薫酒(くんしゅ):香りが高く「すっきりとした味わい」の日本酒

薫酒は、「香り高い」「味わいがシンプル」と分類されるお酒です。

『薫酒』という名前の通り、香りの高さが特徴的です。

香りは果実や花のように華やかな印象、味わいは清涼で軽快です。
そのフルーティーな香りは、ワインに近いこともあり、海外でも人気の高いタイプとなっています。

薫酒タイプは、これまでの日本酒を多様化させた存在です。
このタイプの登場により、ワイングラスで日本酒を飲んだり、和食以外にフレンチやイタリアンに合わせて飲んだりと、楽しみ方が多様化しました。
そのため、若年層や女性層、さらには海外の日本酒ブームを牽引する重要な存在です。

薫酒に該当する日本酒は?

【薫酒の代表的なお酒】

薫酒は、主にフルーティーな香り(吟醸香)を生成する 「吟醸酵母」 を利用した日本酒が該当します。
この吟醸香を発現させるためには、高精白米(精米歩合が低い米)を利用したり、低温で発酵させたりと手間がかかるため、薫酒は販売価格が高いです。

また、薫酒は、特定名称酒でいうと「吟醸」と表記されたものに多く見られます。
例えば、純米酒系の「純米大吟醸酒」「純米吟醸酒」や、本醸造酒系の「大吟醸」や「吟醸酒」は、薫酒に該当することが多いです。

薫酒の適温や相性のいい料理を解説

薫酒は、香りの高いタイプなので10℃前後で飲むのがおすすめです。
華やか・フルーティーな香りは冷やすことによって、よりハッキリとします。
ただし、冷やしすぎると香りが感じられず、奥にある酸味や苦味が表出しやすいので注意しましょう。

薫酒は基本的に冷やして飲むのが良いのですが、例外として、香りが控えめで味のはっきりとした薫酒なら、40℃前後(ぬる燗)でも美味しく飲めます。

薫酒は、その特徴から食前酒に向いているお酒です。
相性のいい料理は薫酒と同じく、華やかで素材の味を生かしたもの。
例えば、カルパッチョなどの魚介類と香草を使った料理や、ベトナムの生春巻きなどと相性がいいです。

 

爽酒(そうしゅ):香りは控えめで「なめらかな味わい」の日本酒

爽酒は、4タイプの中でもっとも軽快でなめらかなタイプです。
そのため、爽酒は「すっきり」や「飲みやすい」と表現されます。
近年では、甘みの少ないドライな爽酒も登場しています。

爽酒は、日本酒全体の約65%を占めるポピュラーなお酒です。
特に、1980年ごろから「淡麗辛口ブーム」 が起こり、爽酒の需要が急増しました。
4つのタイプの中では、低コストで製造できる上に、価格帯もリーズナブルなため広まったと考えられます。

爽酒に該当する日本酒は?

【爽酒の代表的なお酒】

基本的に爽酒は、「本醸造酒」や「高精白米を使用した日本酒(吟醸香の少ないもの)」、「生酒」などが該当します。
また、新潟県は「淡麗辛口」をコンセプトとしている地域のため、特定名称酒を問わず、ほとんどのお酒が爽酒に該当するといわれています。

爽酒の適温や相性のいい料理を解説

爽酒は、すっきりとした飲み口が特徴的なので、この特性を生かすために5~10℃に冷やして飲むのがおすすめ です。
また、冷やし過ぎると本来の味が失われるように感じますが、元々の味わいが軽快ということもあり、薫酒のようにデメリットが目立つことはありません。
そのため、爽酒は冷やして飲むことで本来の味わいが楽しめます。

爽酒は、その軽快な飲み口がゆえに、ほとんどの料理と相性がいいです。
料理自体の邪魔をしないので、あっさりした味付けにも、こってりした味付けにも、ちょうどよくマッチしてくれます。
ご自身の好きな料理と合わせて爽酒を味わってください。

 

醇酒(じゅんしゅ):香りは抑えめで「コクのある味わい」の日本酒


醇酒は、厚みのある飲み口が特徴的で香りは控えめなお酒です。
精米歩合が少なく、米や米麹由来の旨味を感じられる「THE 日本酒」といったタイプになります。

そのため、「リッチな味わい」や「フルボディ」と表現されることが多いです。
少しクセがある一方、伝統的な味わいということもあり、近年メディアなどでも注目されてきています。

醇酒に該当する日本酒は?

【醇酒の代表的なお酒】

特定名称酒の中では、純米酒系の「純米酒」や「特別純米酒」などが該当します。
また、「生酛系酒母作られた日本酒」や「無濾過」、「原酒」なども醇酒に該当します。

醇酒の適温や相性のいい料理を解説

醇酒は、4つのタイプの中で適した温度帯が広いお酒です。
そのため、お酒の種類によっては15〜18℃、または40〜55℃(ぬる燗や熱燗)など、調整しながら異なる味わいを楽しめます。

基本的に、 醇酒はコクと旨味成分が強いお酒です。
この特徴を生かすためにも、通常よりやや低めの温度か少し温めたぬる燗で味わうのがおすすめです。

こうした特徴から、醇酒は濃厚な料理や旨みの強い料理に適しています。
特に、酒の肴の定番であるカラスミや塩辛などコクのある料理と相性がいいです。
また、旨味成分の多い生カキとは、醇酒の旨みと同調します。
醇酒は料理の生臭さを抑える効果が4つの分類の中で最も高いため、魚介類との相性がとても良いお酒です。

 

熟酒(じゅくしゅ):香りが力強く「重厚な味わい」の日本酒

熟酒は、複雑に濃縮された香りと、粘性の高い飲み口が特徴的なお酒です。
この特徴から、外見は透明ではなく、黄色や茶色など少し色味がかっています。
4つのタイプの中では、もっとも個性的な味で、飲む人を選ぶタイプのお酒といえます。

また、熟酒は製造コストがかかるため、基本的に高額なものが多いです。

質の高い熟酒を作る場合は 「温度」が大切です。
熟成温度は高くても低くてもいけません。
絶妙な熟成温度を維持し、長期間かけることで、美味しい熟酒が完成します。
そのため、熟酒は製造コストがかかって、高額なものが多くなるのです。

熟酒に該当する日本酒は?

【熟酒の代表的なお酒】

「古酒」、「熟成酒」、「熟成古酒」、「長期熟成酒」、「秘蔵酒」などが熟酒に該当します。
ほかにも、特定名称酒を問わず、「3年または10年以上寝かした長期熟成の日本酒」を熟酒に分類されます。

熟酒の適温や相性のいい料理を解説

熟酒も醇酒と同じく、お酒の種類によって最適な温度が異なります。
主に、15〜25℃、または35℃前後が適温ですが、熟酒は個性的な味わいのお酒であるため、あえて温度を低くして、香りや旨味を抑える飲み方も存在します。
また、温める場合は、温度によって香りと旨味のバランスが崩れないように注意してください。

熟酒は、その芳醇な味わいから食後酒に適しているといわれています。
もし、料理に合わせるなら、ほかのタイプでは合わせないような、個性的な料理がおすすめです。
特に、ステーキや焼肉、すき焼きなどの風味の強い料理や脂分の多い料理、インド料理などのスパイスを効かせた料理などと相性がいいです。

 

番外編:特別な製法で作られた日本酒の分類はどうなる?

日本酒の中には、4タイプに当てはめにくい、特殊な製法で作られたものが存在します。
主に、「スパークリング日本酒」や「にごり酒」、「樽酒」、「貴醸酒」などは、特殊な製法で作られたお酒といえます。

そこで、以下にこれらのお酒を4タイプに分類した場合、どうなるのかをまとめました。

【特別な製法で作られた日本酒の分類】

名称 味のタイプによる分類
スパークリング日本酒 爽酒
にごり酒 醇酒
樽酒 醇酒
貴醸酒 熟酒

このように、特殊な製法で作られたお酒も、その香りや味わいで4タイプに分類できます。
ただし、あくまで、このように分類されることが多いということであって、必ずこのように分類されるわけではありません。

例えば、味わいの深いスパークリング日本酒なら、爽酒ではなく醇酒といっていいかもしれません。
あくまで、4タイプ別の分類をベースに、どのタイプに当てはまるかを考えてみてください。

 

まとめ

  • 薫酒(くんしゅ):香りが高く「すっきりとした味わい」の日本酒
  • 爽酒(そうしゅ):香りは控えめで「なめらかな味わい」の日本酒
  • 醇酒(じゅんしゅ):香りは抑えめで「コクのある味わい」の日本酒
  • 熟酒(じゅくしゅ):香りが力強く「重厚な味わい」の日本酒

今回は日本酒についての基礎知識として、日本酒の味のタイプについて解説してきました。

基本的に日本酒は、上記の4タイプに分けることができ、それぞれの味に特徴があります。
こうしたお酒の分類を覚えておくと、日本酒の特徴を理解しやすいと思います。

特に、各タイプの適温や適した料理を知っておくと、実際に飲むときにより深く日本酒を楽しむことができます。
これから日本酒を飲む時は、本記事の4タイプを思い出して、タイプ別に適した飲み方を実践してみてください。

(『味のタイプ』でお酒を探したいときには、こちらから調べたい『味のタイプ』を選択して調べると便利です!)

 

次回は、第4回「日本酒の味わいは8つの要素で決まる!通になるための知識を解説!」です。

 

【参考文献】
日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI) 著『新訂 日本酒の基』 NPO法人FBO 2018年

 

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