【日本酒事始め】日本酒と和食!相性の良い組み合わせはどれ?相性の良さを味のタイプ別に紹介!

前回の記事「お酒と料理が『合う・合わない』とは?知っておきたいお酒と料理の相性の基礎知識」では、お酒と料理が『合う・合わない』についての基礎知識を解説しました。

今回の記事では、その基礎知識を踏まえて、『日本酒と和食の相性』について紹介していきたいと思います。

 

突然ですが、お寿司にはどんなお酒が合いますか、と尋ねられたら何と答えますか?

お寿司を焼酎と一緒に楽しむ人もいれば、白ワインと合わせる人もいるでしょうし、居酒屋とかであれば、酎ハイなどと合わせる人もいるでしょう。
しかし、やはり、日本酒がお寿司に合うお酒と答える人が多いのではないでしょうか。

では、お寿司にはどんな『日本酒』が合いますか、と尋ねられたら何と答えましょうか?

寿司も日本酒も、同じ日本という国の中で育まれてきたものですし、前回の記事でも書いたように、日本酒は魚介類や米酢を用いた料理と相性が良いため、どの日本酒であっても、合わせたらまずくなってしまった、というようなことにはならないと思います。

なので、どの日本酒をおススメしてもよさそうですが、できれば、相性ピッタリなお酒を勧めたいですよね。

そこで今回は、和食と相性の良い日本酒はどんな日本酒なのかについて紹介していきたいと思います。

 

Contents

日本の料理『和食』の中の日本酒

日本酒と和食の相性について解説する前に、まずは日本の料理『和食』とその中における日本酒の位置づけについてみておきましょう。

 

『和食』について

日本の料理は「日本料理」「和食」などの呼ばれ方をしますが、2013年にユネスコの世界無形文化遺産(ICH: Intangible Cultural Heritage)として登録された日本の料理の名前は「和食WASHOKU」です。

ICHに登録する際の申請では、『和食』は単なる料理ではなく、『「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた「食」に関する「習わし」』と位置付けているそうで、『Respect for Nature』が和食を紹介する日本語版リーフレットでも、英語版リーフレットでもキーワードとされています。

そして、そのパンフレットでは、以下の4つが和食の特徴として挙げられています。

【和食の4つの特徴】

  • 多様で新鮮な食材と素材の味わいを活用
  • バランスが良く、健康的な食生活
  • 自然の美しさの表現
  • 年中行事との関わり

農林水産省のWebサイトでは、この4つの特徴の記述を若干修正した上で、以下のように解説しています。

(1)多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重

日本の国土は南北に長く、海、山、里と表情豊かな自然が広がっているため、各地で地域に根差した多様な食材が用いられています。また、素材の味わいを活かす調理技術・調理道具が発達しています。

(2)健康的な食生活を支える栄養バランス

一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われています。また、「うま味」を上手に使うことによって動物性油脂の少ない食生活を実現しており、日本人の長寿や肥満防止に役立っています。

(3)自然の美しさや季節の移ろいの表現

食事の場で、自然の美しさや四季の移ろいを表現することも特徴のひとつです。季節の花や葉などで料理を飾りつけたり、季節に合った調度品や器を利用したりして、季節感を楽しみます。

(4)正月などの年中行事との密接な関わり

日本の食文化は、年中行事と密接に関わって育まれてきました。自然の恵みである「食」を分け合い、食の時間を共にすることで、家族や地域の絆を深めてきました。

 

和食と日本酒

日本酒は和食を構成する重要な要素の一つであり、和食とともに造られ、発展し続けてきました。

そのため、日本酒も、上記の特徴を兼ね備えています。

(1)の特徴については、南北に長い日本では、材料は共通して米、水を使っていても、その産地によって性質や特徴が異なるため、お酒が造られる地域や酒蔵によって味わいが異なり、多様な『地酒』が各地にあります。

(2)の「健康的」については、お酒は基本的に体を冷やす働きがありますが、日本酒はその中でも最も体を冷やす働きが弱いお酒とされていますし、最近では動脈硬化や糖尿病の予防効果も期待できるという研究もあるようです。

(3)の「季節」については、『季節を味わう!特別な日本酒の種類を紹介!』の記事でご紹介したように、春酒、夏酒、ひやおろし、新酒など、日本酒には季節に応じた特別な造りのものが存在します。

(4)の「年中行事との密接な関わり」については、『季節のイベント別!その場に適した日本酒の選び方やおすすめを解説!』の記事でご紹介したように、花見とお酒の関わりには長い歴史があり、例えば、ICHへの登録申請書にも書かれていることですが、古来、お正月には、邪気を払ってその年を健康に過ごせるように、数種の薬草を日本酒などのお酒にひたして作った「お屠蘇」を飲む風習があります。

そして、よく言われることですが、お米を原料とした日本酒は、いわば、『液体のご飯』ともいえます。

「和食の基本は『一汁三菜』」といわれますが、これは、ご飯に『一汁三菜』が付いている、というのが和食の献立の作り方ということです。

和食では、最も大切なものが『ご飯=お米』になっており、全てのメニューはこのご飯に合う『おかず』として作られているわけです。

従って、『液体のご飯』たる日本酒が和食と合うのは自然なことともいえるでしょう。

 

日本酒と和食!相性の良い組み合わせを味のタイプ別に紹介

それでは、ここからは、日本酒と和食で相性の良い組み合わせを紹介していきたいと思います。

基本的には、前回の記事「お酒と料理が『合う・合わない』とは?知っておきたいお酒と料理の相性の基礎知識」でご紹介した、相性の良いお酒と料理の組み合わせである『香りや食感、味わいが同じような感じである(調和)』ものを取り上げていますので、前回の記事の内容なども思い返しながら読み進んでいただけると、憶えやすいと思います。

 

お寿司に合う日本酒のタイプ

まずは、記事冒頭で問題提起した「お寿司」に合う日本酒のタイプからです。

お寿司には、軽快でシンプルな味わいが特徴の「爽酒」がおススメです。

お寿司では酢をなじませた酢飯が使われますが、この酢の酸味はお酒が持つ酸味と反発しやすいです。

そこで、お寿司には、日本酒の中でも酸味が相対的に少なく、シンプルで淡麗な味わいを持つ「爽酒」が適しているというわけです。

ネタに応じて日本酒を変えてみる

お寿司には滋賀県の名物鮒ずしなどの「なれずし」や富山県の名物鱒ずしのような「押しずし」などのように、さまざまな種類がありますが、今日、一般に「寿司」といった場合には「握り寿司」を指すことが多いと思います。

その「握り寿司」は、酢飯の上に色々な具材(ネタ)を載せて提供されるものですが、そのネタには、マグロ・トロなどのような濃厚な旨みが特徴的なものや、コハダやアジ、イワシなどの魚らしい味わいが特徴のものなど、味わいの異なる様々なものがあります。

また、アジ、イワシなどの「光り物」は、生のままの場合もあれば、酢で締めて提供される場合もあります。

「爽酒」は軽快でシンプルな味わいが特徴なので、たいていの調理法・食材に無難に合い、それもあって『お寿司に合う日本酒のタイプは「爽酒」』とご紹介したのですが、逆に、寿司の多様性を踏まえて、ネタに応じて日本酒を変えてみる、というのもありでしょう。

例えば、酢で締めたネタには、酢と調和しやすい「爽酒」を合わせ、マグロやトロのような濃厚な味わいのネタには、濃醇な味わいが特徴の純米酒などの「醇酒」を合わせてみるとよいでしょう。

寿司には様々なネタがあるので、どのネタにどんな日本酒が合うのか試してみるのも楽しいのではないでしょうか。

 

酒の肴には「醇酒」を合わせる

イカの塩辛、カラスミ、コノワタなどのコクがある・旨みの強い酒の肴には、同じくコクがある「醇酒」が適しています。

また、酒の肴の産地が分かっているのであれば、同じ産地の地酒を合わせて楽しんでみるのも良いでしょう。

さらに、例えば、佐賀のお酒『鍋島』には、同じ産地である有田焼の『陶悦』の酒器を合わせれば、味覚的にも視覚的にも楽しめます。

元々日本酒は食中酒ではなかった?

現在は、食中酒として食事と一緒に飲まれることが多い日本酒ですが、歴史的には、日本酒は、味噌や塩辛など塩気や旨みの強いちょっとしたものを肴に日本酒は飲まれていました。

高校生の古典の教科書によく出てくる吉田兼好の『徒然草』には、時の最高権力者、鎌倉幕府第5代執権、北条時頼が、少しばかりの味噌を肴にお酒を飲んでいたというエピソードが載っています。

また、酒どころとして有名な新潟県、旧国名では越後国の武将、上杉謙信は大の酒好きで、その辞世の句(亡くなる時に詠む詩。その言葉のイメージとは異なり、死の直前ではなく、死を意識したときに詠まれることの方が多い)は以下のようなものでした。

  • 四十九年一睡夢(四十九年、一睡の夢)
  • 一期栄華一杯酒(一期の栄華、一杯の酒)

そんな上杉謙信のお酒の飲み方というのは、家臣たちを集めてワイワイと飲むというのではなく、一人で月などを眺めながら、塩や味噌、梅干しなどを肴に黙々と飲む」というスタイルであったそうです。

塩分の取りすぎ・お酒の飲みすぎであったのか、謙信は49歳で脳卒中または胃がんで亡くなったと言われています(みなさんも、塩分とお酒の取りすぎには注意してくださいね)。

話が少し脱線しましたが、昭和のころまでは、このように塩気や旨みの強い肴と一緒に日本酒は飲まれており、いわば、伝統的な飲用スタイルなわけです。

歴史上の人物のエピソードに思いをはせつつ、塩辛などを肴に自然を眺めつつ、日本酒を飲んでみるというのもよいのではないでしょうか(くれぐれも、塩分の取りすぎ・アルコールの飲みすぎには注意してください)。

 

会席料理には「爽酒」を合わせる

会席料理とは、会合や俳諧の席で出す酒宴を伴う料理のことで、その献立は、

  • 先付(さきづけ):前菜
  • 椀物(わんもの):吸い物・煮物
  • 向付(むこうづけ):刺身・膾
  • 鉢肴(はちざかな):焼き物、焼き魚
  • 強肴(しいざかな):炊き合せ
  • 止め肴(とめざかな):酢の物・和え物
  • 食事(しょくじ):ご飯、みそ汁、漬物
  • 水菓子(みずがし):果物

という豪華なものでした。

会席料理は、一皿の上に複数の料理が盛られていることもあるため、それぞれの料理に応じたお酒を合わせるというのはなかなか難しいものです。

そこで会席料理に合わせたいのが、料理と相性の幅が広い「爽酒」です。

爽酒は軽快でなめらかな飲み口なので料理の邪魔をしないため、繊細な味付けが多く、また、品数も多い会席料理と一緒に飲むのに向いているお酒と言えるでしょう。

また、少しリッチなお酒との組み合わせを楽しみたいなら、純米大吟醸酒や大吟醸規格の「薫酒」もおススメです。

「薫酒」は爽酒と同じようにシンプルな味わいが特徴の日本酒だからです。

 

郷土料理に「醇酒」を合わせる

郷土料理には、やはり、同じ産地で作られた「地酒」を合わせるのが適しています。

特に伝統的な郷土料理と同じく、伝統的手法で作られた「醇酒」は相性がいいでしょう。

郷土料理の中でも、近年話題のB級ご当地グルメといった軽い料理に合わせるなら、「薫酒」や「爽酒」、スパークリング日本酒、日本酒カクテルなども、同じくシンプルで軽やかな味わいを持っているため、相性がいいでしょう。

 

和菓子には「熟酒」や「薫酒」を合わせる

「和菓子」と「日本酒」と聞くと、一見相性が悪いように感じますよね。ただ海外では甘いものとお酒を楽しむ文化が存在します。例えば西洋では、洋菓子とブランデーを一緒に味わいます。実は日本酒と和菓子もお酒の選択に気を付ければ、料理とは違った味わいを楽しむことが可能です。

本記事が参考にしている『新訂 日本酒の基』では次のような話があります。

日本酒の楽しみ方を未来につなぐため、日本酒と料理の相性を問うことを目的とした「第一回 酒友グランプリ2017夏」が開催され、数ある部門がある中、革新部門では「羊羹(ようかん)」と相性の良い日本酒を約500名の審査員が投票で決めました。

その投票結果は以下のようなものでした。

【「第一回 酒友グランプリ2017夏」革新部門 投票結果】

  • 第1位:熟酒 212票
  • 第2位:爽酒 179票
  • 第3位:薫酒 176票
  • 第4位:醇酒 138票

投票の結果、羊羹の強い甘みと「熟酒(特に甘みの強いもの)」の相性が良いと評価されました。和菓子と日本食は一見相性が悪く感じますが、味のタイプに気を付ければ、洋菓子とブランデーのように楽しめる組み合わせになるようです。

ちなみに果実類を使用した水菓子類には、香りの強い「薫酒」が適しているなど、和菓子の種類によっては、適した日本酒が異なることもあります。

 

番外編:現代人は「薫酒」が好き?

『新訂 日本酒の基』では、次のようなことも書かれています。

「薫酒」は1980年〜1990年以降、甘い果実のような吟醸香で人気となったお酒で、「第一回 酒友グランプリ2017夏 伝統部門 まぐろの漬け」や「第2回 酒友グランプリ2018冬 伝統部門 鯖の味噌煮」などで、もっとも相性が良い酒類として選ばれました。

しかし、薫酒が人気となる前は、日本酒愛好家の中では、「薫酒のフルーティーな香りと和食の繊細さは合わない」という意見が少なくなかったそうで、実際、酒友グランプリの審査員は、ビギナー層が多いため、愛好家ほど細やかな相性は気にしていない傾向があるようです。

それでも各部門で「薫酒」が選ばれた理由としては、そもそも多くの消費者がフルーティーな香りを好むこと、そして、薫酒の香りが加わることにより、料理に新たな風味が加わりおいしくなったと感じられたこと、などが考えられるそうです。

前回記事「お酒と料理が『合う・合わない』とは?知っておきたいお酒と料理の相性の基礎知識」の”2.お酒と料理の相性が良い例”の中で紹介した、『創造(お酒と料理の組み合わせにより新たな風味が生まれる)』に当たる現象が起き、評価されたのでしょう。

このように、「日本酒とお酒の相性」といっても、その「相性が良い」の感じ方は、その人の感覚はもちろんのこと、経験や好みなどによっても異なってくるものです。

ですので、ここまで紹介してきた「相性の良い」組み合わせは、世の中の最大公約数的な「セオリー」ですので、これを参考にしながら、いろいろな組み合わせを試して、自分なりの『相性の良い組み合わせ』を探してみるとよいのではないかと思います。

 

まとめ

今回は、和食と相性の良い日本酒の味のタイプを紹介してきました。

日本酒も内包する和食は、日本人が長い年月をかけて育み、今では『世界無形文化遺産』にも指定された素晴らしいものです。

せっかく、そうしたものを受け継ぐ日本という国で暮らす幸運に恵まれたのですから、その文化遺産の神髄、日本酒と和食の素敵な組み合わせを知って、その素晴らしさを味わってみてください。

文献にみられるだけでも1,300年、おそらくは2,000~3,000年の歴史の中で、私たちの祖先たちが脈々と受け継ぎ発展させてきたことに思いを馳せるなら、深奥なる味の世界と、私たちにつながる幾億の『絆』を感じられるでしょう。

本記事を参考に、みなさんも日本酒と和食の妙なる組合せを楽しんでみてください!

【参考文献】

 

次回は、第13回「世界に羽ばたく日本酒!各国の料理と日本酒の相性の良い組み合わせをご紹介!!」です。

 

  もしお気に入りいただけましたら、投げ銭などしていただけると、大変、嬉しいです♪
投げ銭
   

→次の記事へ

←前の記事へ

↑「日本酒事始め」Topへ

↑「メニュー」Topへ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

関連記事

コメント (0)

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

Archives

スポンサードリンク

 

ページ上部へ戻る