【飲み比べ】秀吉が愛した日本酒「天野酒」と光秀の名を冠する「蓬莱 純米吟醸 明智光秀」を飲み比べてみた!

 

こんばんは。
このブログをご覧くださいまして、ありがとうございます。

今回は、豊臣秀吉が愛飲したという日本酒「天野酒」と、その秀吉と天下をかけて戦った明智光秀の名前を冠する「蓬莱 純米吟醸 明智光秀」をご紹介いたします。

amanosake_akechimitsuhide

 

Contents

○ 秀吉が愛した日本酒「天野酒」

前回の記事では「諸白」のお話をしました。

本能寺の変の直前に行われた、徳川家康の接待「安土饗応」では「山樽」というお酒が出されたのですが、これは「諸白」と呼ばれる、掛米にも麹米にも白米を使うという製法で作られたもので、今日の日本酒の原型となったものです。

そして、本能寺の変が起きた1582年頃、この「山樽」と並んで有名なお酒がありました。
それが「天野酒」。

amanozake

河内国(大阪府南部)の天野山金剛寺で作られていたお酒です。

前回ご紹介しましたが、「山樽」は正暦寺、この「天野酒」は金剛寺、と両方ともお寺で作られたお酒です。
あれ、お坊さんて肉食・飲酒禁止じゃなかったっけ?と思われる方がいるかもしれません。

まあ、その通りなのですが、憲法に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」とあるのに、「自衛隊は必要最小限度の『実力』であって、憲法で禁止された『戦力』には当たらない」という、摩訶不思議な解釈によって自衛隊は合憲としている日本人ですから、ご先祖さまたちもしっかりとした解釈をされています(ちなみに、管理人は自衛隊に否定的な考えは持っておらず、むしろ、憲法を改正して変な制約はなくした方がよいと思っている人です)。

昔のお坊さんとお酒のつながり

お坊さんたちの間では、酒は『般若湯』と呼ばれていました。
『般若』というと、

を連想しますが、こちらのことではありません。

『般若』はパーリ語(上座部仏教の経典で使われている、古代インド中西部で使われていた言語)の『パンニャー』を漢字にしたもので、その意味は「智慧(=心理を見通す力)」。
仏教の目的であるこの世の真理に至る(=悟りを開く)智慧のことです。
『湯』は漢方薬では「葛根湯」のように「煎じ薬」の意味で使われており、そのため、『般若湯』とは「真理に至る智慧の薬」の意味です。

仏教の目的というのは、まあ、教派や人によっていろいろと異なったりはしますが、管理人は、『大般涅槃経(だいはつねはんぎょう)』という、お釈迦様の臨終の様子について語る経典に書かれている、お釈迦様の最後の言葉がそれだと解釈しています。
曰く、

「もろもろの事象は過ぎ去るものである。怠ることなく修行を完成なさい。」

中村元 訳『ブッダ最後の旅 大パリニッバーナ経』

「もろもろの事象は過ぎ去るものである。」とは『諸行無常』のこと。
仏教の究極の目的とは、この『諸行無常』を悟るために『修行』すること、だと。

なので、『般若』とは、『諸行無常』という真理に至る智慧のこと。
『諸行無常』とは、「全てのものは変化し、永遠に変わらないものなど無い」ということで、そこから仏教では、「この世のすべては空しいもの(=からっぽ、存在しない、無)」ととらえます。

で、なんでお酒が『般若湯』というかというと、お酒を飲んでいって限界を超えると意識が飛んで『無』に至るから(と考えられます)。
まあ、気の利いたお坊さんがいたものです^^;

ちなみに、『般若(=智慧)』が怖い鬼のようなお面のことを表すようになったのは、定かではありませんが、『源氏物語』で嫉妬にかられて生霊となり、光源氏の奥さんを呪い殺してしまった六条御息所という女性が、『般若経』を読んでその生霊を取り除いたから、という説があったりします。

話がかなり脱線しましたが、そんなわけで、お酒は『般若湯』としてお坊さんにも飲まれていましたし、昔のお寺というのは、以前の記事でもご紹介しましたが、『神仏習合』という日本の神様は、仏教の仏様が日本人様に姿かたちを変えて現れた存在で、神様も仏様も本質的には同じもの、というこれまた日本独特の解釈がされていたために、神社の中にお寺が建てられており(『神宮寺』といいます)、神社では『お神酒』として神様にお酒をお供えするので、そうした意味で、お酒は必要なものでした。

また、お酒を造るには原料となる大量の米、その米を麹菌を使ってアルコールに変えるという、バイオテクノロジーの技術が必要で、そうした大量の米を入手できる経済力と、技術力を持った組織というのは、昔はお寺しかなかったため、お寺で酒造りが行われていたというわけです。

こうした、お寺で作られていたお酒のことを『僧房酒』といいます。
そんなわけで、昔はお寺でお酒が作られていたのです。

天野酒ってどんなお酒?

で、お話を戻して「天野酒」について。
これは大阪府南部にある天野山金剛寺というお寺で作られていたお酒で、史料上では1432年にその名前が確認できるそうで、その味は絶品で、贈答用のお酒として人気があったそうです。

戦国時代には、戦国武将に陣中見舞いとして贈られたそうで、特に豊臣秀吉は、このお酒を大変好んでいるという書状が届けられたり(その書状が宝物殿に保管されているそうです)、1598年に行われた、太閤秀吉の今生の別れの宴ともいうべき『醍醐の花見』でもふるまわれたようです。

そんな天野酒ですが、伏見や灘などのお寺ではない酒蔵が造るお酒が台頭してきたからでしょうか、江戸時代に入ると酒造りは行われなくなってしまったのですが、大阪府河内長野市の西條蔵さんが、当時の資料などをもとにして1971年に復刻させたそうで、現在は、数量に限りはあるものの、通常販売されています。

今回いただくのは、その復刻版『天野酒』です。
こちらは先ほどの画像と同じですが、

amanozake

このように、天野酒は今の透明な日本酒(実際には、蛇の目の猪口のような白い器に注いでみると分かりますが、薄~い黄(or茶)色です)と違って、琥珀色をしています。

現在の私たちが飲む日本酒は、造られてからすぐに出荷される「新酒」ですが、当時の高級酒のほとんどは造られてから寝かせて熟成させた「古酒」だったそうで、そうした古酒は今でもそうですが、このように琥珀色をしています。
なので、おそらくは、この現代の天野酒も数年寝かせたお酒で、それゆえこうした色をしているのではないかと思われます。

 

○ 天野酒を飲んでみた

さて、それでは実際に天野酒を飲んでみましょう。
今回は、現代のお酒との比較ということで、「蓬莱 純米吟醸 明智光秀」と飲み比べてみました。

horai_junmaiginjo_akechimitsuhide

このお酒は、岐阜県飛騨市にある酒蔵、渡辺酒造店さんのお酒です。
お酒のラベルに明智光秀が描かれていますが、この絵は『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』の松本零士さんが描いたものだそうです。

管理人、両作品とも昔の単行本を持っていますが(実家に保存しているので、母親が捨ててしまった可能性もあるのですが、、、)、その単行本の絵とこのラベルの絵、キャラの感じが全然違っていて驚きました。
ちなみに、こちらの渡辺酒造店さん、飛騨の酒蔵さんということで、あのアニメ映画に出てくる、飛騨市のパワースポットで名高い気多若宮神社で御祈祷した「聖地の酒」というのも作っていたりします。

蓬莱 聖地の酒巫女ラベル [ 日本酒 720ML ]

実飲!天野酒

天野酒と明智光秀を蛇の目猪口に注いで並べてみます。

amanoszake_horai

色、全く違いますね。

続いては香りです。
香りは、甘い醤油の香り、または紹興酒の香りと同じです。
これは、現代の日本酒でも、数年寝かせたお酒では紹興酒のような甘い醤油のような香りがします。

そして味ですが、、、甘い。
甘いのですが、まろやかで、砂糖のようだけど、くどくはなく、さわやか。
身近なものだと、みりんのような味で、それに少しアルコールの苦みがあるような感じです。

なんとなく、昔飲んでいた養命酒の味も思い出しました。
それが舌の上を通り過ぎると弱めのアルコール感がふわっと立ち上がります。
『甘露』という言葉が似あうお酒です。

管理人が現在読んでいる数少ない連載中の漫画に「信長のシェフ」があります。
その中で述べられていることなのですが、昔は現在と違って砂糖がほとんど輸入できなかったため、甘いものといえば果物か、ツタなどから採った甘葛(あまづら)という甘味料、お酒を加工して作る水あめしかなく、貴族たちにとっても甘いものは貴重なものだったようです。
それを考えると、この天野酒は当時の人たちにとって、甘いものを味わえる貴重な存在で、それゆえに大人気で、とても喜ばれたのだろうなと思われました。

「蓬莱 純米吟醸 明智光秀」のお味は?

一方の「蓬莱 純米吟醸 明智光秀」の方はというと、、、

淡麗辛口。
分類的には辛口になると思いますが、米の味、旨みもほどよく感じられます。
辛口ではありますが、飲んだ後のアルコール感はそれほど強くなく、口当たりもよいので、比較的飲みやすいお酒です。
キレもよく、余韻は短いです。

 

○ 天野酒を料理と合わせてみた

さて、せっかくなので、天野酒を料理と合わせてみました。

合わせる料理は、前回の記事でもご紹介した、本能寺の変の直前に織田信長が徳川家康を安土で接待した「安土饗応」で出された料理の中の中から選びました。
それが以下のもの。
・からすみ
・かまぼこ

amanozake_karasumi_chikuwa

それと、安土饗応では出されていないけど、徳川家康が好きだったという鯛、その刺身です。

amanozake_tai

「安土饗応」で出された料理は、こちらの「安土城天主 信長の館」のWebサイトで紹介されていますので、興味のある方は見てみてください。

からすみは近所のスーパーで売っていたこちらの商品を、

karasumi
日本三大珍味「長崎からすみ」 一袋(スライス5枚入り)

かまぼこは近所のスーパーで売っていた日本の魚100%で作ったこちらの「ちくわ」に割り箸を通したものです。

kamome_chikuwa

「かまぼこ」なのになぜ「ちくわ」?と思うと思われますが、戦国~安土桃山時代の「かまぼこ」は魚のすり身を串につけて焼いたものだったそうで、今の私たちからすると、ちくわのような形をしていました。
それが、江戸時代に入ると、今日私たちが知っているような、板の上に魚のすり身を盛り上げて焼いて加熱して作られる「板かまぼこ」ができあがり、それと区別するため、従来の串付きのかまぼこは、断面が竹の切り口のように見えることから「竹輪かまぼこ」と呼ばれるようになり、時の経過とともに、単に「竹輪(ちくわ)」と呼ばれるようになったそうです。

なので、そんな歴史にちなんで、今回は、ちくわに割り箸を通してみた次第です。
もっとも、割り箸を通しているだけで、それ以外には何の手も加えていないので、これは普通の竹輪です^^;

からすみと合わせてみた

さて、では、からすみと合わせてみます。
5切れで990円と、さすが日本三大珍味、スーパーで買ってもお高いです。
でお味の方はといいますと、普通のからすみのお味。
ねっとり感があり、魚卵のこくがほどよく感じられます。

これにお酒を合わせてみます。
まずは、天野酒、、、

酒の甘みが強いので、からすみの味が消えてしまいました。
酒の方には影響なし、という感じですね。

一方の「蓬莱 明智光秀」は、、、
酒の味が勝るのでマリアージュなどはありません。
が、天野酒は飲んだ後もお酒の甘みが舌に残るのですが、こちらは、切れが良いので、からすみの味も含めて、舌を清めてリセットしてくれます。

かまぼこ(ちくわ)

続いてはかまぼこ(ちくわ)。
白身魚の甘みが結構強めに感じられる一品でおいしいです。

天野酒と合わせてみると、、、
お互いに甘みが強いので、酒の強い味をちくわの旨みが中和して適度な甘みに抑えてくれます。
味の方向性が同じものは相性が良いというのが、ペアリングの鉄則ですが、この場合の組み合わせがそれかなと。
これはこれで面白い組み合わせかもしれません。

「蓬莱 明智光秀」はというと、、、
ちくわの少し強い甘みが引き締まって、ちょうどよいお味になります。
これは、結構よい相性かなと思います。

鯛の刺身

最後に鯛の刺身と。

天野酒の方はというと、、、
お酒の味の方が強いので、刺身の味だけでなく、しょうゆの味すら飛びます。

一方の「蓬莱 明智光秀」ですが、、、
刺身の味とお酒が調和してタイの旨みが引き出されます。
いい相性です。

その他のものともあわせてみた

こうして飲み比べて思うのは、天野酒は薄味で淡白な料理の多い和食の食中酒にはあまり向いていないかな、ということです。
甘味が強いので、薄味で淡白な料理の味を消してしまうのです。
一方で、濃厚な料理には向いているかもしれません。

ためしに、ニンニクとショウガの利いた味の強いスーパーのから揚げと合わせてみると、今度は天野酒の味の方が消えましたし、カキフライにブルドック中濃ソースをかけて食べたところ、ソースの味がお酒の甘みを中和してくれて、程よいアルコール感とカキフライの味が楽しめました。

最初の方で、紹興酒の味に似ていると書きましたが、紹興酒は濃厚な味付けが多い中華料理と一緒に飲まれます。
一般に、紹興酒や、日本酒だと、この天野酒のような熟成させて味わいが濃くなったお酒というのは濃厚な料理に合わせるか、若しくは食後のお酒、デザートと合わせるのに向いていたりします。

なので、ポッキーとたけのこの里と一緒にいただいてみたのですが、甘味が強くない、むしろチョコレートの苦みのある普通のポッキーだとお互いが調和してちょうどよい感じになりますし、ミルクの甘みのあるたけのこの里とだと、お互い譲らず、味が併存ずる感じでした。

なので、やはり、セオリー通り、このお酒を飲むときは、食後のお酒とするか、食中酒とするなら、うまみの強い濃厚な料理と合わせるといいかなと思います。

 

終わりに

さて、今回は「天野酒」をご紹介しました。
甘みの強いお酒なので食中酒とするよりは、食後にお酒そのものを楽しみながら飲むのが良いかな、と思われるお酒でした。

まあ、このお酒は今から400年以上前のお酒を復刻させたものですから、食事に合うとか合わないとか、そういうことに価値があるのではなく、昔の人たちがどのようなものを飲んで楽しんでいたのかということ、それを知り、感じられるところに最大の価値があると思います。
もっというと、価値を云々するのも無粋だと思います^^

一度はなくなってしまった昔のお酒。
それを復活させるために多くの労力をかけてくれた、そのことに敬意を表しつつ、戦国の昔をしのびながら、このお酒を飲んでみるのもいいのではないかなと思いました。

お値段もそんなに高くないので、皆さんも機会があったら、ぜひ、飲んでみてください☆

それでは、今回はこの辺で。

【参考文献】
横田 弘幸 著「ほろ酔いばなし 酒の日本文化史」 敬文舎 2019年

 

☆ 今回のお酒を買うならこちら

僧房酒 [ 日本酒 300ml ]
蓬莱 純米吟醸 明智光秀 [ 日本酒 岐阜県 720ml ]

 

  もしお気に入りいただけましたら、投げ銭などしていただけると、大変、嬉しいです♪
投げ銭
   

↑「日本酒と歴史」Topへ

↑「メニュー」Topへ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

関連した銘柄

関連記事

コメント (0)

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

Archives

スポンサードリンク

 

ページ上部へ戻る